ひさしぶりに 「おにゅう峠」に行ってきました
更新日:2025/12/16
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季節
むかし、小浜からオートバイでおにゅう峠を越え、朽木村(現在の高島市)へ行ったことがあります。
その時は福井県側の林道に未舗装の区間があり、転ばないようにゆっくり慎重に走ったことを覚えています。たぶん20年ほど前のことだったと思います。
その後はしばらくおにゅう峠のことを忘れていましたが、ふと「今はどうなっているのだろう?」と気になり、調べてみると全区間が舗装されているとのこと。そこで天気の良い日を選び、軽自動車で出かけてみることにしました。
スタートは「鵜の瀬」から
今回の出発点は、前回の「おばま水シリーズ」でも紹介した「鵜の瀬」です。
鵜の瀬といえば、毎年3月2日に行われる「お水送り」の行事で有名ですが、普段は自然豊かな隠れた景勝地でもあります。静かな流れと周囲の緑を楽しみながら、ここでゆっくり散策してみるのもおすすめです。







鵜の瀬~下根来
鵜の瀬を出発し、県道35号線(久坂中ノ畑小浜線)を通っておにゅう峠を目指します。道幅が狭い場所も多いので、気になるスポットがあれば無理に停めず、適切なスペースを見つけて車を置き、歩いて散策することにしました。
鯖街道 壁画
鵜の瀬から約1kmほど進むと、大きな「壁画」が目に入りました。そこには「鯖街道」「根来坂」と書かれています。このあたりは、かつて京都へとつながる「鯖街道」が通っており、のちほど紹介する「針畑越え」などのルートも、この道沿いから歩いて行くことができます。
壁画には【京ハ遠テモ十八里】という言葉も描かれていました。これは「やればできる」「不可能ではない」という前向きな気持ちを示しているように思え、少し背筋を正してくれるような出会いでした。
気持ちを新たに、次のポイントへと向かいます。



下根来エリア
鯖街道の壁画から歩いて5分ほどで、下根来(しもねごり)地区に到着しました。少し周辺を散策してみます。
入口付近には「猩々橋」があり、豊かな自然に包まれた遠敷川の流れが心地よく感じられました。


橋の手前右奥には、八百比丘尼の墓があります。夏場は草が生い茂っていたため近くまで寄れず、今回は県道から撮影しましたが、やや分かりづらい印象でした。
「八百比丘尼」伝説に関するおばまナビの記事はこちら⇒ 不老長寿の人魚伝説をめぐる旅!

さらに少し上流には八幡神社があり、御祭神は譽田別尊(ほんだわけのみこと)とのこと。こぢんまりとしていますが、静かで落ち着いた雰囲気の社でした。



その先へ進むと、見昌寺(けんしょうじ)が見えてきます。大きなお堂を望むことができ、橋から眺める遠敷川も清らかで、日差しを受けて水面がキラキラと輝いていました。今回は時間の都合で立ち寄れず、県道沿いからの拝観にとどめましたが、あらためて訪れてみたいと思わせるお寺でした。
ちなみに、お寺近くの橋のたもとには「神の谷」バス停もあり、バスでの訪問も可能です。




下根来~上根来
谷口地蔵尊と谷口橋
下根来地区からおよそ1.5km進むと、道路右手に小屋が見えてきます。こちらは「谷口不動尊」で、地元の名士の石碑と並んで鎮座していました。小屋の中には椅子もあり、ハイキングや鯖街道を越える人の休憩所としても利用できそうです。
おにゅう峠へは、すぐそばの谷口橋を渡ってさらに進みます。橋の手前には未舗装の林道が分岐しており、思わず入ってみたくなりましたが、今回は計画外なので見送ることにしました。



景色が素敵な砂防ダム
谷口地蔵尊からさらに上流へ進むと、砂防ダムが姿を現します。自然の中にたたずむその姿は、まるで滝のようで、思わず足を止めて見入ってしまいました。流れ落ちる水音も心地よく、しばし癒されます。
なお、ダムは関係者以外立ち入り禁止となっていますので、ご注意ください。




中の畑地蔵尊と小さな祠
さらに進むと「中の畑地蔵尊」がありました。こちらも小屋風の造りで、中で休憩できそうです。
地蔵尊の側には小さな祠があり、庚申様が祀られていました。両方に手を合わせ、道中の安全を祈ります。
少し先には「鯖街道」の案内板も設置されており、ハイカーにとって安心できる目印になっていると感じました。



上根来エリア
中の畑地蔵尊から約2km進むと、上根来に到着します。石仏群を過ぎると集落の入口です。

上根来はかつて300人が暮らしていたそうですが、現在は無人集落となり、行政区としても消滅しています。しかし、移転された元住民の方々が「上根来プロジェクト」として村の維持管理を続けており、集落内はとてもきれいに保たれていました。
上根来プロジェクトのHPはこちら
また、百里ケ岳(ひゃくりがだけ)の木地山峠ルート登山口も案内板があり、わかりやすく整備されています。




休憩所もしっかり整えられており、古民家を活用した「鯖街道お休み所『助太郎』」は、4月から11月の土・日のみ開放されています。囲炉裏があり、懐かしさを感じる空間でした。なお、トイレは24時間利用可能ですので、マナーを守ってきれいに使いたいですね。







さらに、集落にはお寺(宗福寺)と神社(廣嶺神社)もあります。今回は廣嶺神社に立ち寄りましたが、しっかり整備されていて清々しい気持ちでお参りすることができました。



いよいよ「おにゅう峠」へ!!
上根来の集落を後にし、最終目的地「おにゅう峠」へ向けて再出発します。ここからは落石や枝葉が散らばっている箇所もあり、慎重な走行が必要です。


畜産団地跡と上根来水源の森
上根来の外れには、かつて広大な畜産団地が広がっていました。平成初期まで数百頭もの牛が飼われていたそうで、いまもいくつもの牛舎跡が残っています。なお、敷地内は立ち入り禁止となっていますのでご注意ください。
この場所を過ぎると、約3km先のおにゅう峠まで集落はなく、深い山道を進むことになります。


さらに200mほど進むと「上根来水源の森」の案内が見えてきました。ここは「水源の森百選」に選ばれている場所で、福井県内で選定された3カ所のうちのひとつ。「水源の森百選」は、林野庁が平成7年度に選定したもので、森林と水、人との理想的な関係を示す代表的な森とされています。
案内板の近くには小さな滝もあり、静寂の中に響く水の音がとても印象的でした。



鯖街道(針畑越え)
さらに進むと「鯖街道(針畑越え)」の入口に差し掛かります。ここから京都へと続く古道が伸びており、かつて若狭の魚を京へ運んだ歴史を思い起こさせます。
針畑越えの詳細についてはこちら



おにゅう峠からの展望は最高!
針畑越え入口を過ぎ、いよいよゴールのおにゅう峠へ。途中には古びた橋や滝もあり、道中も見応え充分でした。

いよいよ「おにゅう峠」
ついに「おにゅう峠」に到着です。取材時は滋賀県側が通行止めになっていたため、反対側から登ってくる車はありませんでした。
峠は少し広めなので、通行の妨げにならないよう脇に車を停めます。
福井県側の景色
まずは福井県側の展望を眺めます。方向音痴な私は、峠に設置された地図盤を見ながら位置を確認。正面には小浜市街が確認できました。
当日は少し霞んでいたため、若狭湾までははっきり見えませんでした(そもそも見えるかどうかは不明)が、眼下に広がる景色は十分に魅力的でした。


滋賀県側の景色
一方、滋賀県側は琵琶湖方面ですが、山々が連なり湖面までは望めません。それでも、雄大な山並みが続く景色は福井県側に劣らず美しいものでした。


今回、登り始めは快晴だったのに、峠に着いた頃には雲が広がり始めていました。青空の下なら、さらに迫力ある眺望が楽しめたことでしょう。
峠からの景色を満喫したあとは、市街地へ戻るだけ。荒れた山道に気をつけながらゆっくり下っていきました。
秋の峠で「雲海」を楽しみたい
おにゅう峠は、実は「雲海」の名所としても知られていることをご存じでしょうか。
10月から12月にかけての早朝、気象条件が整うと、谷間いっぱいに雲海が広がり、まるで天空の世界に迷い込んだような幻想的な景色に出会えるそうです。
さらに、この時期は山々が紅葉に染まるため、赤や黄色に彩られた木々と白い雲海が織りなすコントラストは格別。まさに、この時季ならではのご褒美といえるでしょう。
これからの季節、少し早起きをしてカメラを手に峠を目指してみませんか。目の前に広がる景色は、日常を忘れさせてくれるような特別な時間になるはずです。
なお、先述のとおり滋賀県側は通行止めのため、現在は福井県側からのアクセスのみとなっています(取材時点)。
【まとめ】
かつてはバイクでただ峠を目指すだけの道のりでしたが、今回改めて訪れた「おにゅう峠」は、全線が舗装されて走りやすくなり、途中の寄り道も含めて大いに楽しむことができました。
道中の景観や立ち寄りスポットのおかげで、移動そのものが旅の一部として充実した時間になったのだと思います。



