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福井県・若狭地方の冬の味覚といえば、なんといっても「へしこ」です。 鯖(さば)などの魚を塩漬けにし、さらに糠(ぬか)に漬け込んで長期熟成させる伝統的な保存食です。 「一度食べたら、ご飯が止まらない」 「日本酒のアテに最高」 私自身、最近小浜市に引っ越してきてから「角野さんとこのへしこはうまいよ~」との声を何度か耳にし、ずっと気になっていました。 そこで今回、角野さんに取材をお願いしてみたところ、快く承諾してくださいました! なぜ、角野さんのへしこはそんなにおいしいのか? その秘密を探るべく、製造工場へ潜入取材を敢行しましたので、その結果を報告します!

👨‍👩‍👧‍👦 伝統の継承:冬の命綱から全国へ羽ばたく味へ

始めに、角野さんのへしこ作りのルーツ、販売開始時のエピソードから紹介します!

なぜ、角野さんがこれほどまでにへしこ作りに情熱を注ぐのか。その答えは、角野家が代々受け継いできたへしこ作りへの想いと、その歴史にありました。

❄️ 雪に閉ざされた冬を支えた「命の保存食」

角野さんの家では、昔からへしこ作りが行われていました。かつて交通が未発達だった頃、角野さんの家がある若狭の山間部や海岸沿いの集落は、冬になると積雪で道が閉ざされ、他の町から孤立してしまうことが珍しくありませんでした。

へしこは、そんな冬を乗り切るための「命の保存食」として、代々欠かすことなく作られてきたのです。当時は、主に家族の食料として作って、近所の方にもお裾分けしていたそうです。

角野さんにとってへしこは子供のころから慣れ親しんだソウルフードなんですね!

🚀 わずか二年で完売!口コミで広がった圧倒的な人気

その伝統の味を「多くの人に届けたい」という想いから、角野さんは2014年頃に初めてお客さん向けの商品としてへしこを作り始めました。

初年度: 最高の品質にこだわり、まず70本を製造。春から販売を始めると、評判が評判を呼び、秋頃にはあっという間に完売しました。

二年目: 「一年中販売できるように」と翌年は200本に増産。しかし、初年度の好評ぶりが影響し、二年目は春から販売を始めたものの、夏には200本すべてが完売してしまったそうです。

京都や大阪など他府県からの注文も非常に多く、角野さん自身もその反響の大きさに驚きを隠せなかったといいます。最初の数年で口コミは広がり続け、徐々に地元の飲食店だけでなく、東京の飲食店からも注文を受けるようになり、へしこは地元の保存食から全国区の味へと羽ばたき始めました。

📺 メディアも注目!注文殺到の裏側

新聞や雑誌などからの取材はよくあるそうで、テレビの取材も受けたことが何度かあるそうです。特にテレビで放送された直後は、ひっきりなしに電話が鳴り続け、家族総出で発送作業に追われるほどの注文が入ったこともあったといいます。

🔒 究極の品質管理:角野流へしこ製造

次に、こだわりの製造方法についても紹介します!

「角野さんちのへしこ」が多くの人を魅了し続けるのは、決して偶然ではありません。そこには、角野さんの強いこだわりと手間を惜しまない管理体制がありました。

🌾 糠へのこだわり:「きな粉のような味」の厳選素材

へしこの風味を決定づける重要な要素が、漬け込む糠(ぬか)です。角野さんは、地元の信頼できる農家さんから直接仕入れを行い、一度農家まで出向き、味見をさせてもらう徹底ぶりです。

糠の中にはえぐみが強いものがあるため、角野さんが選ぶのは、えぐみが少なく、まるできな粉のような芳醇な甘みがある良質なものだけ。この厳選された糠が、へしこに独特の旨味と深みを与えています。

角野さんの「糠床」が生む”純粋な旨味”

多くのへしこ業者は、糠だけでなく調味料も一緒に漬け込むことで、比較的早く味を完成させ、熟成期間を短縮することが可能です。しかし角野さんは、この製法を選択しません。

角野さんのへしこは、糠漬けの際に使うのは、厳選された糠と唐辛子のみ。唐辛子は主に虫よけとして表面に振りかけるだけで、味付けの役割は担っていません。

「人工的な調味料に頼らず、へしこのおいしさをつくりだすのは、純粋な糠の力による発酵と熟成だけ。調味料で味を早くつけてしまうと、最初の味は良くても、奥から来るはずのへしこの芳醇な風味がなくなり、どこか違和感のある味になってしまうんです。」

角野流のへしこは、本質的な発酵のコクを追求しているのです。

使い終わった糠は業者が買い取ってふりかけに生まれ変わるそうです!調味料を入れていないからこそ再利用できるんですって!

📅 仕込みは真冬の1月!理由はその「安全性」

角野さんがへしこを仕込むのは、毎年1月上旬頃と決まっています。真冬の最も寒い時期を選ぶのは、気温が低いため、魚を塩漬けにする途中で傷むことを防げるほか、虫の混入リスクを大幅に減らすことができるのです。

ぬか漬けの様子

🌊 1年以上にも及ぶ熟成と過酷な「膜の管理」

仕込みを終えたへしこは、翌年の2月頃に完成を迎えます。しかし、ただ放置しているだけでは最高のへしこは完成しません。

熟成期間中、へしこが漬け込まれた樽の表面には、余分な空気や虫、カビの侵入を防ぐために「塩水の膜」を張って管理します。しかし、この膜の管理が非常に大変な作業だといいます。

糠が水を吸ったり、水が蒸発したりすることで、この膜はすぐに消えてしまいます。そのため、角野さんは日々樽の中の状況をチェックし、塩水を足すなどして膜を管理し続ける必要があるのです。

さらに、樽によって発酵・熟成の進み具合が異なるため、完成時期が遅れるときがあります。最高の状態を見極め、追加で3か月以上熟成させてから出荷されるへしこも多く、角野さんのへしこは、まさに「究極の長期熟成」を経て生まれているのです。

🌟 二つの傑作:鯖の大きさ、糠、そして「木樽」が分ける品質

角野さんのへしこは、その品質へのこだわりから、主に以下の2種類のラインナップに分けて製造されています。

製品名使用鯖の大きさ使用糠熟成環境特徴
特上本づくり鯖へしこ800g前後の国産特大鯖無農薬の糠発酵に好ましい菌が住む木樽最高の素材と環境で熟成させた、角野さんの究極の逸品
本づくり鯖へしこ600g前後の国産鯖減農薬の糠通常の樽毎日楽しめる、角野さんの伝統製法が光る定番品。

特に最高級の「特上本づくり鯖へしこ」には、角野さんの強いこだわりが凝縮されています。

使用するのは、800g前後の特大の国産鯖と、一切の妥協を許さない無農薬で育てられた糠。さらに熟成には、発酵に好ましい天然の菌が住み着いている木樽を使用しています。

廃校を活用したへしこ工場!!

ここからは、へしこ工場に潜入取材したときの様子を紹介します!

まず始めに驚いたのが、角野さんは2019年から小浜市の田烏という地区にある廃校を利用して、へしこ作りをしていることです!

ここはもともと、田烏小学校として田烏区の児童の学び場となっていましたが、2012年に廃校となりました。その後、市が策定した内外海(うちとみ)地区活性化計画に基づき、へしこ加工場や鮮度を保ったまま冷凍できるCAS(キャス)冷凍機や保管庫などを備えた拠点施設「さかなの学校うちとみKitcken」として改修されました。現在は地元の漁業者らが運営を担い、ただ取り壊しを待つしかなかった建物が、地域の新たな”台所”として活用されています!

ちなみに、名前は当時の地元の小学生たちにアイデアを募って決めたそうですよ!

🕵️工場内に潜入!おいしさの秘密に迫る。

廊下を渡って、へしこの樽が置いてある部屋に案内してもらいました。当たり前ですが、建物が学校なのでとても懐かしい気分になります(笑)

樽がずらりと並んでいます!すごいですね!樽はしっかり袋で密閉されているので、この状態ではへしこの香りはしませんでした。

加工場も見せていただきました。なんとここで試食させてもらえることに!

左が「へしこのなれずし」 右が「へしこのお刺身」

塩抜きしたへしこに、米と麹をいれて約2週間、樽に漬け込んで作る「へしこのなれずし」も角野さんはここで作っています。小浜市の内外海地区でお祭のときなどに食べられてきたもので、各集落ごとに味が違い、角野さんのところでは甘めに作られています。

実際にへしこのお刺身からいただきました。いざ実食。。。

食べた瞬間。。。私の口の中は「へしこ」になりました。これはウソではありません。🤯噛むことで鯖とへしこ特有の芳醇な香りが鼻の方にどんどん抜けていき、私が焦っているうちに口の中はうまみに支配されてしまいました。熟成、発酵により、とにかく鯖の香りとうまみが強くなっていました。これは、焼きでも食べてみたい。。。🔥😋

次に、へしこのなれずしをいただきました。こちらは思ったよりもめちゃくちゃ食べやすい!ふなずしのような酸味の強いクセのある感じかと思いましたが、臭みはなく程よく甘くてこちらも鯖のうまみが感じられて、とてもおいしかったです!🍚🥢

🪵👀実際に樽の中を見せてもらいました!

特上本づくり鯖へしこを1つ購入させてもらったので、実際に1本取り出していただきました!

袋を外すとへしこの香りが一気に部屋に広がってきました!この、香りだけでご飯が食べれそうです(笑)

塩水の膜を取り出して、中を慎重に掘っていくと。。。

糠がぎっしり詰まったへしこが出てきました!

角野さんとへしこ

隣の加工場にて真空パックしていただき、持ち帰らさせてもらいました!ありがとうございました!

👨‍👧一般の方も見学できます!

角野さんは一般の方の見学も受け付けておられます。1人550円で試食もさせてもらえるそうです!
※見学は2名からです。見学の2日前までに予約が必要です。

角野さんが電話(TEL0770-54-3006)で受け付けておられます。詳しく知りたい方はぜひお問い合わせください!

🏠後日、家でいただきました!

背骨のついていない方の半身は刺身にします。切り離して、糠を水で流し、薄い表面の皮を剥ぎます。腹骨はピンセットで抜きました。

皮を剥いでる途中

適当なサイズに切って刺身完成!!

背骨のついている身は焼いていただきます!糠はある程度取って、適当なサイズにカット🔪

腹骨は素揚げにすると美味しいそうなのでやってみました!お菓子みたいでめちゃくちゃおいしい!

焼きへしこはグリルで軽く焼きました。脂乗りがすごい!表面の糠が鯖の油でカリっと揚がってます。

ちびちび白米といただきます🍚焼くことでへしこの旨味たっぷりの香りがさらに強く感じ、めちゃくちゃ美味しかったです!

余った分は冷凍しておきます。味、風味が落ちないように冷凍保存がおすすめだそうです!

🛒 「角野さんちのへしこ」を味わうには

「角野さんちのへしこ」は、以下の方法で購入することができます。

オンライン購入: 一般の方は、角野さんの公式ホームページから直接購入が可能です。カット済みの楽々セットもあるので鯖の調理に不安のある方でも安心して味わうことができますよ!

電話注文: 一本もの(丸ごと)や半身での購入をご希望の場合は、電話でも注文を受け付けています。

釣り船・民宿かどの
〒917-0102福井県小浜市矢代4-42
TEL:0770-54-3006
FAX:0770-54-3256

小浜市内の店頭販売: 小浜市の道の駅では、へしこの切り身や、刺身も販売されているそうです!ぜひお近くにお越しの際はお立ち寄りください!

💡 取材を終えて:圧倒的なおいしさの秘密は「時間」と「純粋さ」

今回の「角野さんちのへしこ」工場への潜入取材を通して、そのおいしさの秘密は、雪に閉ざされる冬を乗り越えるための「命の保存食」としてのルーツに「最高品質を全国へ」届けたいという角野さんの情熱が加わっていること。魚の旨味を早く引き出すための調味料を一切使わず厳選した糠と時間の力のみで、へしこの風味を追求する「純粋さ」さらに1年以上にも及ぶ熟成期間中、「塩水の膜」管理を日々行う、一切の妥協を許さない姿勢。

角野さんのへしこは、手間と時間を惜しまない職人の愛によって「育てられた」、若狭の伝統であることがわかりました!

ぜひ一度、「角野さんちのへしこ」を味わい、ご飯が止まらなくなるほどの、純粋で芳醇な発酵の旨味を体験してみてください!

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著者:hikihara

2025年4月に京都から小浜市に移住してきました。 自ら体感した小浜の魅力をお届けしていきます。

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