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不老長寿の人魚伝説をめぐる旅! 小浜のソウルフード「醤油干し」も紹介

「人魚の肉を食べ、永遠の若さを手に入れた少女が、800年の時を経て故郷で眠りについた。」

福井県小浜市には、そんな「八百比丘尼(やおびくに)伝説」が今もなお色濃く息づいています。

しかし、小浜の魅力はそれだけではありません。古くから「御食国(みけつくに)」として日本の食文化を支えてきた、豊かな海の幸もまた、この地の大きな魅力です。

この記事では、八百比丘尼が入定した「空印寺」などの伝説の地を巡りながら、小浜が誇る絶品「醤油干し」など、この地ならではの食文化にも触れていきます。

八百比丘尼とは?800年を生きた尼僧の物語

八百比丘尼伝説は、東北から九州まで、全国各地にバリエーションを変えて語り継がれています。小浜で伝わる物語は、このようなお話です。

八百比丘尼伝説の一説

むかしむかし、若狭の国に高橋権太夫という裕福な男がいました。ある日、権太夫は宴に招かれ、お土産に珍しい「人魚の肉」を持ち帰ります。気味悪がって誰も手を付けない中、16歳の美しい娘だけが、それとは知らずに一切れ食べてしまいました。

すると不思議なことに、娘はそれから全く年を取らなくなり、いつまでも若々しい姿のまま時を過ごします。

10年、20年と経つうちに、家族や友人は皆、年老いて先に世を去っていきました。いつまでも変わらない娘の姿を、周囲の人々は次第に恐れ、避けるようになります。永遠の命は、必ずしも幸福ではなかったのかもしれません。

深い孤独の中、娘は120歳になったとき、尼となって日本中を巡る奉仕の旅に出ることを決意します。道路を開き橋をかけ、神社仏閣を建立修繕するなど善行を重ねました。

長い長い旅の末、八百比丘尼は、ついに故郷である若狭小浜へと戻ります。そして、800歳になったとき、海の近くにある空印寺の洞窟の前に一本の白椿を植え、「この椿が枯れた時、私も命尽きたと思ってください」と言い残し、静かに洞窟の中へと姿を消したといわれています。

※諸説あります

門前に佇む「八百比丘尼入定洞」

山門をくぐってすぐ左手、苔むした岩肌にぽっかりと口を開けているのが、八百比丘尼が入定したと伝えられる洞窟です。

八百比丘尼入定洞

現在は安全のため柵が設けられ、中に入ることはできませんが、その前に立つと、尼僧が何を想い、なぜここを最後の場所に選んだのか、つい考えてしまいますね。

洞窟の前には、八百比丘尼が愛したとされる椿の木が植えられており、毎年美しい花を咲かせます。

彼女が植えたとされる白椿の伝説も相まって、この地は健康長寿や若さを願う人々のお参りが絶えないパワースポットとなっているのだそうです。

空印寺のもう一つの顔【小浜藩主・酒井家の菩提寺】

空印寺

八百比丘尼伝説で知られる空印寺ですが、実は小浜藩主・酒井家の菩提寺(ぼだいじ:先祖代々のお墓があるお寺)という、もう一つの重要な顔を持っています。

空印寺を訪れて感じたのは、ここが地域にとって「心のよりどころ」として、今も生きている大切な場所だということです。

私が訪れた時も、地元の方がお参りに来る姿がちらほらと見え、このお寺が日々の暮らしに溶け込んだ大切な場所であることが伝わってきました。また、山沿いにあるため境内はとても静かで、季節ごとの木々や花々、空気を感じられる場所でもあるなと思いました。

空印寺に訪れた際は、人々の暮らしに寄り添うお寺の穏やかな空気を、ぜひ感じてもらえたら嬉しいです◎

詳しい話を聞きたい場合は事前に連絡を

空印寺の境内や、門前にある「八百比丘尼入定洞」は、どなたでも自由に見学できます。

しかし、「ご住職から八百比丘尼伝説の詳しい話を聞いてみたい」「お寺の中も拝観したい」という方は、事前連絡を、とのこと。

お寺の中には、八百比丘尼様を祀った【八百姫菩薩】が安置されており、予約すれば拝観が可能です。

八百姫菩薩

また、伝説にまつわる貴重な資料なども見せていただける場合があります。

より深く伝説の世界に触れたい方は、空印寺へ直接お電話にてお問い合わせの上、訪れてみてくださいね。

空印寺の詳細

◇住所:〒917-0052 小浜市小浜男山2
◇アクセス:小浜ICから車で10分 JR小浜駅から徒歩10分
◇料金:400円(基本無料、案内が必要な場合のみ)
◇駐車場:有り
◇TEL:0770-52-1936
公式サイト

空印寺 を詳しく見る ≻

もう一つの人魚伝説スポット「若狭小浜人魚明神」

空印寺で八百比丘尼の悠久の物語に触れたなら、次はこちらのパワースポットへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

若狭おばま観光案内所

JR小浜駅からすぐの「若狭おばま観光案内所」には、八百比丘尼伝説にちなんだ、もう一つの人魚の物語が息づいています。

駅前ポストの上で33年間、街を見守った人魚像

観光案内所の入口で優しく微笑むこの人魚像。実は、平成3年(1991年)から令和6年(2024年)までの約33年間、小浜駅前に立つ郵便ポストの上で街のシンボルとして愛されてきた存在です。

この像は、小浜市制40周年と、全国の八百比丘尼伝説ゆかりの地が集う「八百比丘尼サミット」の開催を記念して設置されました。八百比丘尼が人魚の肉によって不老長寿を得たという伝説にちなみ、「美と健康、長寿」への願いが込められています。

駅前のポストの上というユニークな場所から、行き交う人々の手紙に込められた想いや、小浜の日常を見守り続けてきたのかもしれません。

観光案内所での新たな役目

多くの人々に親しまれてきた人魚像ですが、郵便ポストの更新をきっかけに、小浜郵便局から市を通じて若狭おばま観光協会へ寄贈されることになりました。

そして、「これからも人々の想いを見守り続けてほしい」という願いを込めて、観光案内所に祀られることとなったのです。

以前からの「美・健康・長寿」のご利益に加え、新たに「恋愛の成功」も見守ってくださるのだとか。小浜を訪れる人々の旅の安全と、さまざまな願いを叶える新たなパワースポットとして、優しい眼差しを向けています。

あなたの願いが小浜の文化財を守る力に

缶バッジや御朱印も用意されている

人魚明神のユニークな点は、お賽銭の使い道にもあります。皆様からお預かりしたお賽銭は、一時的な利益のためではなく、その全額が小浜市内の神社仏閣のために寄付されるそう。

つまり、ここで願いを込めてお参りすると、小浜の貴重な歴史や文化を支えるための大きな力になるようです。

小浜を訪れた際は、八百比丘尼伝説が紡いできた歴史に思いを馳せながら、ぜひ人魚明神に手を合わせてみてください。

若狭小浜人魚明神の詳細

◇住所:〒917-0077 福井県小浜市駅前町(若狭おばま観光案内所 横)
◇アクセス:小浜ICから車で10分 小浜駅から徒歩1分
◇料金:なし
◇駐車場:有り
◇TEL:0770-52-3844

若狭小浜人魚明神 を詳しく見る ≻

旅の締めくくりは醤油干しを求めて「田村長」へ

八百比丘尼の伝説に触れ、人魚明神に願いを託した後は、この旅の締めくくりに小浜が誇る「食」の魅力を堪能しに行ってきました。

伝説の舞台となった若狭小浜は、古くから「御食国(みけつくに)」として豊かな食文化が根付く場所です。その伝統の味を今に伝える老舗が、小浜市の小浜日吉にあります。

200年以上の歴史を紡ぐ、魚の老舗

田村長

今回訪れたのは、文政6年(1823年)創業の「田村長(たむらちょう)」さん。江戸時代から200年以上にわたり暖簾を守り続ける、まさに小浜の歴史と共に歩んできた魚の専門店です。

現在、6代目当主が伝統の技を継承しつつ、日々お客様に喜ばれる味を追求し続けています。

店内に入ると、まず目に飛び込んでくるのがずらりと並べられた美しいデザインの缶詰です。

そしてショーケースには、若狭地方の伝統的な発酵保存食「へしこ」や、小浜名物「鯖の丸焼き」が堂々と並び、食欲をそそります。

小浜市民のソウルフード「醤油干し」を購入

数ある商品の中でも、まず味わっていただきたいのが、小浜で古くから愛されてきた「醤油干し」です。

干物メニュー
鯖の醤油干し
いわしの醤油干しと汐干し

干物といえば塩干しやみりん干しが一般的ですが、ここ若狭小浜では、醤油ベースのタレに漬けて干した「醤油干し」が主流。みりんの甘さに頼らず、醤油の風味で魚本来の旨味を最大限に引き出すのが特徴です。

私も自宅用に鯖といわしの醤油干しを購入し、早速その日の夕食にいただきました。

グリルで焼いている最中から、醤油の香ばしい香りが。パリッと焼けた皮目と、魚の脂と旨味がジュワッと溢れ出すふっくらとした身のハーモニーは、まさに絶品でした。

甘すぎないので、炊き立てのご飯はもちろん、晩酌のお供にも最高の一品です◎

職人技が光る若狭伝統の逸品たち

田村長さんには、醤油干し以外にも魅力的な商品がたくさんあります。

まずは、宝石のような美しさ「小鯛の笹漬け」。

杉樽の蓋を開けた瞬間に笹の香りが広がり、きらきらと輝く小鯛の美しさに思わず息をのみます。職人さんが一枚一枚、丁寧に手作業で仕上げる笹漬けは、お祝い事の贈答品や、自分へのちょっとしたご褒美にも最適です。

次に、小浜土産の定番「缶詰」。

日持ちするため、家庭の常備品としてはもちろん、お土産や贈り物としてもおすすめです。

数ある缶詰の中でも特に珍しいのが、この「焼き鯖缶詰」。なんと、香ばしく焼いた鯖をそのまま缶詰にしているのは、田村長さんだけなのだとか。ちょっと変わった鯖缶も一緒に購入したい方は、ぜひお試しください。

最後に、若狭地方の伝統的な発酵保存食「へしこ」。

独特な香りがクセになる、小浜の伝統食品です。田村長さんでは、大きなサイズのものから、お試しで購入できる一口サイズのものまで、幅広いへしこが並んでいました。

へしこは好き嫌いが分かれるため、自分用に少しだけ購入できる点が嬉しいなと感じました◎

旅の思い出を、食卓へ 

田村長さんでは、干物などは冷凍で提供してくれるため、遠方への持ち帰りも安心です。また、近年はオンラインでの販売も好調で、お土産でその味を知った方がリピーターとして購入されるケースも多いのだとか。

整備された店の前の通りには駐車場も完備されており、車でのアクセスも便利だなと感じました。

八百比丘尼の伝説を巡った後は、若狭小浜の豊かな食文化を、ぜひお土産に持ち帰ってみてはいかがでしょうか。

田村長の詳細

◇住所:〒917-0068 福井県小浜市小浜日吉75
◇営業時間:日、祝以外 9時~17時まで/日、祝 9時~16時まで
◇定休日:水曜日/年末年始定休12/28~1/7 ※臨時休業有り
◇駐車場:あり
◇TEL:0770-52-0310
◇SNS:Instagram公式ホームページ

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著者:藤原ひろこ

小浜市在住のフリーランスライター。 大好きなパソコンを使って、Webライターやオンライン事務などの在宅ワークしています。 小浜を含む若狭全域のカフェめぐりや、子連れでも行けるスポットの開拓が好きです◎ 【好きなモノ・コト】 *家族でお出かけ *カフェめぐり *野菜

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